孟嘗君(5)

孟嘗君といえば斉の宰相として記憶していたが、一巻から読み進めてもなかなか孟嘗君が宰相にならない。というかいつまで経っても子供のままで、話の中心は白圭を中心に紡がれていく。しかしながら、白圭がとても見事な人物でこの時代を生き抜いた英雄として、その大きな器に惹きつけられていく。最終的には孟嘗君も斉の宰相に任じられるが、語られる物語は非常に少ない。なぜ孟嘗君というタイトルであるにも関わらず、前半は白圭中心に話が進むのか、なぜ斉の宰相の出来事を少ししか描かないのか、読後には疑問が湧いた。しかし、孟嘗君を語る上では、彼が活躍する時代のその前の時代と彼を育てた父親の生き様が彼を創り上げており、父親の白圭を語ることこそが孟嘗君を語ることなのではないか。斉の宰相というのは孟嘗君の人生を見た中では一つの時代にすぎず、その時代が彼のハイライトであったとしても、そのハイライトの裏側には、数多くの困難と不遇の時代を経たからこそのものであり、彼の人生を知るということは、そういうものにも確りと光を当てるものだ、ということではないかと思うに至った。