けんか中納言光圀 火炎の乱 (徳間文庫)

若き日の水戸光圀が徳川将軍家を補佐するシリーズの第三弾。今回は、明暦の大火で甚大な被害を受けた江戸の町の復興の影に蠢く利権に鋭く切り込んでいく光圀が描写されています。冒頭からの火事の描写がとても克明ですね。初期徳川幕府時代の江戸の地理についても詳しく説明しながら、江戸の町がいかに焼かれていったのか、江戸の民がどれほど苦しんだのかが、丁寧に描かれています。民の窮状を見かねて立ち上がる光圀――助さん、格さんと共に日本中の庶民の悩みに寄り添う晩年の光圀の片鱗が、ここには既に現れています。読みごたえ十分。