本をどう読むか: 幸せになる読書術 (ポプラ新書)

じつは新聞掲載の書評を読み、小生のようなドンクサイ読者を勇気づける内容が期待できることをあらかじめ知りながら購入しました。少しでも癒されたいぞ、と。その”ドンクサ”さの主なものは、遅読、積読、忘却、電子書籍忌避症、です。その本の著者は、ものすごく時間をかけて著しているのに速読ってナニよ。その本が、そこになければ読まれる機会はないし、いいなと思って買ったままの本をあとで買おうと思っても絶版、ってナニよ。読みながら思考した経緯に意味があるのに、忘却曲線に抗うほど必死に知識をため込むってナニよ。持ち運びには便利だけど書き込めないし、引用ページがわからないし、今どのあたりを読んでるかわからない電子データ（電子書籍）ってナニよ。次々と癒してくれました。詳しくは本書をあたっていただくしかありません。さて、本書は全体的には著者岸見氏の読書体験の総括的な内容といえます。要は、本はこうやって読んだらいいんじゃない？に対するご自身の経験則を披露しています。ですから、巷間の読書ハウトゥと、そうは違わないかと思いきや、そろそろ終焉にさしかかる205頁あたりからご自身の主張ビームが強力になります。「第五章本で外国語を学ぶ」という章ですから、へたしたら読み飛ばそうかと思った章なのに、です。そこにこそ納得いく主張が並んでいたのは意外です。英語…、読み書きと、話すこと、どちらか一つしか選べないなら間違いなく”読み書き”だ、と。話さないからといって、それが人間の価値を決めることではない、外国語を学ぶ目的はコミュニケーションだけではない（鈴木大拙はゆっくり英語をしゃべったから、人はその話にじっくり耳を傾けた、という好例を引き合いに）。文法と語法は違う、というのも説得的です。詳しくは本書をあたっていただくしかありませんが。勉強ってナニ？知らないことを学ぶことが面白くないはずはないのに、大人がそれを知らないから子どもに伝わるはずがなく、勉強が嫌いになっても不思議はない。そもそも、勉強して何かを達成する必要はないのに、子どもたちにとっは他者との競争に勝つことが目的化している。本当は学んでいるその時々が「幸福」なんです…と。そう感じながら勉強すれば、あるとき遠くまでたどり着いたことに気づく、というわけです。ついでにいうなら、読書感想文…、それで読書嫌いにさせちゃ本末大転倒、ってことですね。小生もこれで数十年間の本嫌いを貫き通すこととなりました。読書という著者との対話を人生のメタファーとしてこう述べます。人生の有限性にどう対処すべきか。人生の目的にできるだけ効率的にたどり着こうとする人は、極端にいうなら死に効率的に向かうの？ってことになりかねません。限られた時間内にあわただしく駆け抜ける読書より、ゆっくり読んだ方が見えなかったものが見えるようになり、これから何冊読めるかが大きな問題ではないことに気づく。人生も、あとどれだけ生きられるかと考えなくなれば異なる人生が見えてくる。まさに読書は人生、ですね。期待したとおりフツーだった内容が、200頁以降に箴言・金言がゾロゾロ発掘されてＶ字回復の★５つとしたかったのすが、残念ながらところどこに作文技術的にNG箇所があり（編集の問題かもしれませんが）、★ひとつ減とさせていただきましたのは、厳しすぎたかな、ごめんなさい。