茅島氏の優雅な生活 (1) 【イラスト付き】 (幻冬舎ルチル文庫)

10年前に出版されたノベルスの文庫化です。初期の遠野作品はかなり読んでいましたが、この『茅島氏』だけは未読でした。読んでびっくり……こう言っちゃ何だけど、最近の作品よりむしろ面白いし、文章も簡潔で読みやすいじゃない、へぇー、って感じでした(笑)浮世離れした孤独な資産家青年が、一途に庭師の「彼」を恋い慕うさまが、淡々とした文章で語られます。「彼」視点の場合は、茅島氏と一般人とのギャップに頭を悩まし、あまりの身分差から二人の関係にブレーキをかけようとする辛さが汲み取られます。お互い好きなんだし、側にいるのに切ない恋。茅島氏にだんだん絡めとられ、抜き差しならない関係になっていく「彼」にニヤニヤ(笑)イラストは日高ショーコさんでオール書き下ろし。ノベルス未収録の短編もあるので、旧版を読んだ方も一見の価値あるかと思います。